目黒 紀夫 マサイ研究者 目黒 紀夫

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2021.09.30/授業情報,

授業紹介:環境社会学

明日から後期がはじまります。その初日からスタートするのが、この「環境社会学」の授業です。

ということで、明日のガイダンスの資料を横目に見ながらこの授業紹介を書いているのですが、授業紹介ということでおそらく強調しておかないといけないのは、環境社会学は「社会学の一分野」ではないということでしょう。

社会学を専門的に勉強していない人(たとえば高校生)にはちょっとわかりにくいと思うのですが、環境社会学は社会学という一つの学問分野の中のさらに狭い一分野ではなく、「社会と環境のかかわりをあつかうさまざまな学問が集まってできた幅広い分野」あるいは「社会と環境のかかわりをフィールドワークにもとづいて調査・研究する人びとの集まり」なのです。

なので、自然保護に取り組むNPOの活動や水俣病をはじめとする公害の被害、原発などのエネルギーをめぐる政策といった人間社会の事柄をあつかうだけでなく、たとえば、人の手が入ることでどんなふうに森や山が豊かになるのかということで生物学や生態学のような分野の議論もしたりするのです。人と自然の関係や社会と環境をめぐる問題を考えるのに使えそうなら、どんな学問の知識であっても遠慮なく使っていくのが環境社会の流儀です。そんな「なんでもあり」な点が、環境社会学の大きな魅力だと思っています。というか、この「なんでもあり」な姿勢って、フィールドワークをベースとするアフリカ研究ではすごくふつうのことだったりします。だからこそ、ぼくはアフリカ研究と同時に環境社会学に惹かれたのだと思います。

また、環境社会学は「ふつうの人びと」や「社会の中で弱い立場に置かれている人びと」に注目をします。これは、そうした人びとの視点を持たないままに取り組まれる自然保護や環境保全が、それぞれの地域で長い時間をかけてはぐくまれてきた人と自然の豊かな関係を破壊してきたという、歴史的な事実にもとづいています。森を守るために家を焼かれる人びと、観光客をたくさん呼び込むために大切な文化を失う社会。じつはそうした例は、日本だけでなく世界のあちこちにあるんです。こうした自然保護や環境保全の裏側、闇の部分を直視して以降とする点で、環境社会学は開発社会学に似ているともいえます。

環境社会学の魅力を伝えるのはなかなか難しいのですが、明日から始まる講義では、自分が書いたこの本の文章を学生に読ませてみようと思います。

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